最近、とある集まりに顔を出したところ、普段はにぎやかな飲食店が好きな友人から、こんな質問を受けました。

「静かで落ち着いていて、しつらえも素敵な、美味しい和食店なんてないかな」と。

即座にパッと頭に浮かんだお店を教えると、うれしそうに帰っていきました。

そのとき紹介したのが、今回取り上げる名古屋市の新栄界隈の「重きよ」という老舗です。

名古屋市営地下鉄東山線・新栄町駅2番出口から歩いて5分のところにあります。

 

美味求真の精神に基づいて、趣のある器といっしょに提供される会席料理こそ、こちらの真骨頂と言えます。

市場から厳選して仕入れる地元や全国津々浦々の食材の持ち味を最大限に引き出しながら、

季節の移ろいをも感じさせてくれる二代目店主の手並み。

「祥福」、「花菱」、「昇天」などのコースをひと通りいただいた後、

この日本の四季の豊かさ、多様性に感じ入る見事な出来栄えです。

その喜びはいつ訪れても変わりません。

月替わりでメニューが一新されることも、定期的に通いたくなる大きな魅力になっています。

 

落ち着いた明かりの下、効果的に配置された可憐な調度品は、春夏秋冬に合わせて内容が変わるきめ細やかさ。

まるでやさしく微笑むかのように、日々の緊張やストレスをほぐし、お客さんの心を和ませてくれます。

檜の一枚板を用いた洗練されたカウンター7席の他に、4～6名用の個室席が4つ。

 

「侘び」と「寂び」の効いた上品な空間は、きっとかけがえのない方との大切な会食にも

大きな支えとなってくれるに違いありません。

後日、新栄界隈の「重きよ」について教えた友人からLINEでこんなメッセージが届きました。

「この前は、ありがとう。あなたのおかげで、結婚が決まりました」。

 

いつもワイワイ騒ぐのが好きな人がなぜ静かなお店を、とちょっと疑問に思っていたのですが、

なるほど、これでそのときの謎が解決。

原稿を書く手を止めて、もちろん、笑顔の絵文字入りでこう返信しました。

「おめでとう、よかったね。お役に立てて何よりです」と。

その後、しばらくの間、胸の内で幸せな気持ちが広がっていきました。